日本人はとりわけ嫉妬心が強い

そうした有事のために日本人幹部を高給で飼っておくというのである。いつかクビを切られるその日のために数年、あるいは数ヶ月、飽食しながら悠々自適の待遇を得られる。それを良しとする人もいるかもしれないが、多くの人がしり込みをするのではないだろうか。前置きが長くなったが、そうした外資系の特徴を踏まえて、外資系企業に転職あるいは就職して長く勤めるための心構えの一端を紹介したい。もちろんここで述べる処世術と全く逆をやって大成功する道もあるだろう。しかしその道が100人に1人のものだとすれば、残りの99人のための道をお知らせすることは悪いことではないはずだ。

この多数派の道を一言で要約すると失に述べた「三つのず」、三ずの道である。三途の川を連想するようで不気味だと思われる方は、三つのべからずと覚えておいて頂いてもよいだろう。その「ず」とは、「めだたず、おくれず、にくまれず」である。サバイバルの法則、外資系は業績評価が公正で、際立った成果を上げたもののみが報われると思っておられる方には意外感があるだろうが、短期で業績を上げ、ほかの外資系(あるいは日系)へ再転職する道を選ばない限り、「めだたず」ということは重要なサバイバル(生き残り)の要諦である。まず、「めだつ」ことの弊害から述べよう。

外資系企業にもゲマインシャフト的な要素があると先に述べた。嫉妬と羨望が渦巻く社会でもあると言及した。「めだつ」ことは、まさにこの「嫉妬と羨望」の渦に巻き込まれることである。それでは外資系では、何をすればめだつ結果になるのだろうか。際立った業績を上げる、上司の覚えがめでたい、大きな仕事を成し遂げた、マスコミに頻繁に登場する、在日代表(外国人であればなおさら)から特別に目をかけられている、などが挙げられる。これがどうして悪いのか。外国人もそうだが、日本人はとりわけ嫉妬心が強い、女性だけでなく男性もだ。

表面はにこやかに仕事ぶりを褒めていても、内心は何を考えているか分かったものではない。相手が上司ならば、自分に取って代わるのではないかと疑心暗鬼となっているかもしれない。部下は部下で自分との距離がひらくことに焦りを覚えているかもしれないし、同僚は取り返しのつかない差がついたと妬んでいるかもしれない。他人の嫉妬を逆にエネルギーに変えることができるほどの人は別として、嫉妬ほど対処に困る感情はない。自分を彼らのレベルに低めて、「たいしたことはないよ」と慰めても、「おためごかしはいらない」と意図をすぐに見透かされてしまう。超然としていても生意気だと思われ、陰に陽に足を引っ張られる。だから一番よいのは、嫉妬を招かないことである。つまり、めだたないのが最良なのである。

それでは平均的で凡庸な社員でいれば安心なのだろうか。実はそれでは駄目なのだ。平均的社員にはそれだけの価値しかない。外資系企業は業績悪化に伴いよく解雇を行なうが、平均的社員はそれに対抗できない。唯一対抗する手段は、平均的でないほど企業に留まることだ。外資系では会社都合で解雇される場合、勤続年数に応じた割り増し退職金が支給される。日本企業の退職金制度ほど不公平ではなく、例えば5年勤めていれば5ヶ月、10年なら10ヶ月の割り増しがつく。日本企業の場合は20年以上勤めると幾何級数的に退職金が増えるが、それより少ないと分の悪い退職金しかもらえない。それゆえに20年も1つの外資系企業に勤めていると、会社にとってその人を解雇するのは大変なコストを伴うことになり、クビを切りにくいのである。

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