ミニ国家群像

国連には現在、百八十四力国が加盟しており、常駐オブザーバーのスイスを除けば、ほぼ大半の国家が加盟する文字通りの国際機関になった。九一年には韓国と北朝鮮バルト三国など七力国、九二年には旧ソ連からの独立国など十三力国、九三年には解体したチェコスロバキアなど六力国が加わり、植民地独立運動以来の加盟ラブンユとなったことは記憶に新しい。

九一年に加盟したマーシャル諸島共和国は、面積白八十一平方キロメートル、人口一万二千八百人というミニ国家だ。米国やロシアと並んで、こうしたミニ国家群が、「一国一票」を与えられるところに、総会民主主義の可能性と限界がある。中小国にとっては、二国間関係では無力な大国に対して発言できる唯一の場であると同時に、緊急性を要する局面では、しばしば時間を冗費したり、実効力を欠く原因になりかねない場合もある。安保理と総会の権限配分は、「民主主義」という側面と共に、現実の国家の力関係という面を抜きに考えることは難しい。

ミニ国家の一つで、九〇年に国連に加盟した人口三万人のリヒテンシュタイン公国の女性大使、クラウディアーフィリッチェさんを訪ねたことがある。クライスラービルの一室に構えた代表部は、外交官出身のスタッフが彼女一人という「個人商店」だった。朝七時に代表部に出勤し、一日平均五十件、厚さ十センチの国連文書に目を通すことから、大使の一日は始まる。走り読みで必要文書をえり分けるのが精一杯だ。歩いて数ブロックの国連ビルに向かい、日中は委員会の審議に加わる。

七委員会が並行して開かれているため、大使はポケット・ベルを持ち歩き、補佐官が鳴らすと別の会議を抜け出して投票の場に駆けつける。一日に何度も投票することも稀ではない。九一年の総会では、二百五十件を越える決議で、欠席したのは二件だけという優秀な成績だった。これも、近国のオーストリア代表部などが、投票情報を知らせてくれるという好意があればこそだ。

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