肥大化するカネ食い虫

表紙の色が与える印象とは裏腹に、これはパリに本部のある経済協力開発機構OECD)が毎年発行する重さ二キロもある年鑑で『ナショナルーアカウンツ』と呼ばれている。加盟二十四力国の財政の姿がさまざまな角度から統計としてまとめられている。ここに掲げたグラフは最新の一九九八年版から作成したものだ。

すぐに分かるのは、中央・地方政府の公共事業費にほぼ匹敵する。般政府総閥定資本形成の国内総生産(GDP)に占める割合が、日本はほかの諸国に比べて群を抜いて高く、一から三倍に達していることだ。しかも、これには、バブル崩壊後でも異常に高い用地費、特殊法人、公的住宅の費用は含まれていないのだ。こうした支出を加算すれば、日本の公共有業費はさらに突出するだろう。

日本では、国民が払う税金や社会保険料の半分も社会保障給付として返ってこない大きな理由がこれではっきりした。公共事業がみんなのみ込んでいたのだ。

そして社会保険料、とくに厚生年金の保険料は諸外国に比べると払い過ぎており、年間の給付金総額の五年分以上の積み立て金があり、その一部が財政投融資に組み込まれ公共事業に回っているという、あくまでも公共事業最優先のお国柄なのである。多くの国では、積み立て金は一年分以下である。

筆者たちは社会保障費を食いっぶしている公共事業の現状や仕組みを前著『公共事業をどうするか』で分析し、外国にも知られるようになった土建田家を解体する方法を提示した。しかし、不況になればなるほど景気対策のために、補助予算で公共投資が追加され、土建国家は肥人化している。最近の特徴をみておこう。