ヨーロッパにおける参審制度の活用法

もっとも、民事事件の場合は刑事事件と異なって、技術的な複雑さかおり、素人には向かないのではないかという懸念かおることは私も十分承知しています。しかし、日本より法制度が複雑とさえ思えるアメリカでも民事陪審をやっているのです。

争点の整理、裁判官の説示、弁論等をうまくできれば、この点は解決できる問題であり、そうしたことが民事陪審導入のための課題だと考えるべきでしょう。刑事裁判への国民参加実現の足を引っ張るといけないので、刑事裁判がどれだけ難しいかはあまり述べませんが、それと比べて、民事裁判の方が市民にとって親しみやすく、取り組みやすく、従って導入しやすい理由は沢山あるのです。

問題は、そういう本当に意義のある陪審制の実現について、ヤル気かおるのかどうか、それに向けて努力するかしないか、なのです。ところで、改革審が「裁判員制度」を打ち出したことから、政党までこれに引きずられてしまっているようです。各政党の意見も先にふれたように、「裁判員制度」構想を受け入れてしまったかのように見えます。

裁判員制度とは、「日本型参審制度」とも言われ、ヨーロッパで盛んな参審制度をベースに陪審制の要素を取り込んだ制度です。陪審制では、陪審員は事実判断をするだけで、裁判官は法律専門家として法律判断と訴訟手続の進行を担当します。それぞれが役割を分担し、事実はとうかを決める権限が一般の市民にあるという点に第一の特徴かあります。