貸付信託の現状

貸付信託は昭和二十七年六月から始まり、当初は二月ごとに募集していましたが、現在では毎月募集を行い、五日および二十日に締め切(設定)つています。貸付信託の伸びは順調で、募集を始めてから六ヵ月後の昭和二十七年末には総額九十二億円にすぎなかったのが、五十六年七月には二十兆円となり、六十年二月には三十兆円を突破しています。

この間、貸付信託をより魅力あるものにするとともに、事務合理化にも寄与するよう何度か商品の改善が進められています。最近では、五十二年三月に自動継続の取り扱いが、五十六年一月には信託総合口座(個人を対象として、普通預金と貸付信託および当該貸付信託を担保とする当座貸越を一冊の通帳にセットしたもの)が、そして同年六月からは、前述した収益満期受取型(愛称「ビッグ」)が発売されています。マル優枠の三百万円まで元本を預け入れても収益金にはいっさい課税されない預け入れ元本方式を採用したビッグは、金利選好の高まりを背景に残高を大幅に伸ばしています。

このように貸付信託がどんどん伸びてきたのは、インフレも収まって国民の生活にだんだん余裕が出てきたことにもよりましょうが、なんといっても、いままで貸付信託の配当率がほかの金銭信託や預金よりずっと利回りがよかったことによります。

このようにして集められた貸付信託のおカネは、初めは電源開発に三割以上貨し付けられ、その他のおカネも大部分石炭、鉄鋼などの重要産業への貸し出しに限られていました。しかしこれら重要産業の設備も整ってきましたし、日本経済が戦後の復興期から高度成長へと進むにつれて、より広い分野の資金需要に応ずることが望ましいとされて、だんだん貸し出し先の幅を広げてきました。

そして、その後さらに産業構造の変化、資金需要の多様化が進展し、これに対応する形で昭和四十六年には貸付信託法の一部改正が行われ、融資対象は「国民経済の健全な発展に必要な分野」でさえあれば規制はなくなりました。