銀行行動の積極化

不動産業の土地投資は、80年代後半に急増した。この間の不動産業の所要資金81兆5,000億円のうち、約4分の3にあたる62兆3,000億円が銀行からの借入れによって賄われた。これを銀行の側から見ると、銀行の不動産業への貸出は、85年度から89年度にかけて年率19.9%で増加した。これは総貸出の年平均伸び率9.2%を大幅に上回り、その結果総貸出に占める不動産業向けシェアは84年度末の7.6%から、89年度末の9.2%に高まった。

この時期、ノンバンクは銀行以上に不動産融資に積極的であった。ノンバンクは元々金融機関の貸出を補完し、新しい資金需要に対応するものとして重要な役割を果たしてきた。金融機関が大口融資規制、店舗規制などの様々な営業上の規制を受けているのに対し、ノンバンクに対する規制は極めて緩やかであった。このため、80年代後半には金融機関の貸出を補完するだけに止まらず、ややもすれば安易に、かつ他社に追随して融資を拡大する例が見られた。

この時期、ノンバンクの融資業務は急激に拡大している(85年度末22兆円・89年度末80兆円)。貸付金の内容を見ると、事業者向けが全体の9割弱を占め、また、不動産業向けが約4割にのぼる。銀行は、ノンバンクの資金の約8割を供給しており、ノンバンクの積極的活動を資金面から支えていたといえる。

85年度から89年度にかけての銀行のノンバンク向け貸出は総貸出の年平均伸び率9.2%を大幅に上回る年率20.7%で伸び、総貸出に占めるノンバンク向け融資シェアは84年度末の10.2%から、89年度末の20.7%に高まった。

最近アメリカで、大手ヘッジファンドLTCMの破綻が話題になった。これを契機に明らかになったのは、好調を続けてきたように見えるアメリカの銀行の融資対象として、ファンド向けファイナンスのウェイトが高くなっていることであった。これはバブル期の邦銀の融資がノンバンクを通じた安易な「卸売り金融」になっていたのと通じるところがある。