究極の写真整理法

編集者と解釈が違ってボツになった写真でも、別の編集部で重宝されたり、何年後かに敗者復活ということもあります。以前、写真部が長年、撮りためてきた写真のべ夕焼きファイルをひっくり返し、作家たちのちょっと面白い、ユーモラスな写真ばかりを拾い上げて写真集をつくったことがありましたが、いまや大御所となった作家たちのデビューしたての頃の初々しい素顔は、時代を感じさせる背景とあいまって好評でした。

そうかと思うと、十数年も経ってから、自分の撮った写真のべ夕焼きに印ざれた黄色いダーマトの跡を見て、別のコマのほうがよかったかなと思うこともあります。現在はべ夕焼きもコンピューターに入力され、写真選びはモニターを見ながらという時代になりましたが、写真の使用目的は同じでも、選ぶ人によってかなりの個人差があります。見る目が違えば、評価も異なります。一人にけなされたからといって、落ち込むことはないのです。

もしグループで写真撮影を楽しんでいるのであれば、一度、べ夕焼きか、カラーポジのスリーブ合評会をしてみたらいかがでしょう。一枚の写真だけで批評し合うより、はるかに得るところが多いと思いますよ。上手な人のべ夕焼きやカラースリーブを見せてもらうと、どういう撮り方をしているかが分かって、とても参考になります。写真を撮るのは簡単ですが、やっかいなのは整理です。ちょっと油断していると、たちまちお菓子の空き箱ぐらいでは入りきれなくなって、やがてショッピングバッグ、そしてダンボール箱までいっぱいになってしまいます。

数年後、箱の底の一枚を引き出して見ると、まぎれもないわが子の写真だが、背景や服装からは場所も季節も特定できない。はて、いつ、どこで撮った写真だったっけ?日付も焼き込まれていないし、裏にも何も書いてない。ネガカバーはと見れば、ここにも何も書かれていない。カラーネガを明かりで透かして見ても、画像が逆になっていて何の写真かすら分からない。ほかのプリントはと思って見ると、数枚ずつ、べったり貼りついている。

では、どうしたらよいかといわれても、こればかりはその人しだいですから、なんとも申し上げようがありません。わたしが心がけているのは、①同時プリント(全部のコマを伸ばすこと)は絶対にしない。フィルムを現像し、四倍の拡大ルーペで写り具合を調べ、納得のゆくコマにだけ印をつけて伸ばしに出す。②人が撮ってくれた自分の写真も、大事な記念写真以外は、気に入らない顔やポーズのものは惜しみなく捨てる。の二点です。できるかぎりプリントの数を少なくし、整理をしやすくするためです。

ネガフィルムは、先にも書いたように、画像が反転して写っているため、見づらいものですが、特にカラーネガは、色がついているだけに、やっかいです。その色も、カラーリハーサルと違って、見てすぐに何色と分からないだけに、なおさらです。カラーネガフィルムでは、プリントしたときに正常な色を発色させるために、補色と呼ばれる色に現像されています。青く発色させるのには黄色、緑色にはマゼンタ、赤にはシアンが用いられています。それが、みなさんが見ているネガフィルムの色です。

いくらカラーネガフィルムの特徴を理解していても、発色の具合まではプロにも想像できませんが、蛍光灯が中に入った小さなライトボックスが一つあれば、その上にネガフィルムを載せてルーペでのぞけば、構図やピントの良し悪しくらいは判断できます。ところで、山積みになった写真の整理ですが、一枚ごとに思い出にひたっているようでは、いくら時間があっても足りません。そこで、たとえば五年分であれば、五つの空き箱を用意します。空き箱の横に年号を書いて、年号ごとに仕分けてゆきます。休日の家族そろった夕食後にでもやれば、年号不明の写真も家族の誰かが思い出してくれます。実はこれ、わが家でやった苦しまぎれの方法です。