朝鮮は裏の「工作外交」と表の「外務省による外交」を分けて使ってきた

実は初の外相会談の実現は、よくよく考えてみると奇妙な話である。北朝鮮は、米朝高官会談や日朝正常化交渉、南北対話を行いながら、日米韓三国との外相会談はそれまで一度として行わなかったのである。アメリカの場合は、北朝鮮側の外相会談実現の要請を断ってきた歴史がある。しかし、日本と韓国は積極的に申し入れていたのだった。

なぜ、これほどに時間がかかったのか。ここに、北朝鮮の外交の謎が隠されている。北朝鮮は裏の「工作外交」と表の「外務省による外交」を分けて使ってきたからである。北朝鮮の政府と党の組織関係に加え、平壌内部での勢力争いの事情がわかっていると、これは簡単に理解できる問題である。それが理解できていないと、北朝鮮の政策立案と遂行を、一枚岩のように強固なものと誤解しかねないのである。

北朝鮮は、西側諸国に対しては長い間外交を行ってこなかった。それならば、九〇年代の初めに行われた日朝の国交正常化交渉は外交ではなかったのか。この時から、対日外交が「工作」と正規の「外交」の二本立てになったのである。

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