旅客にとってのアライアンスのメリット

アライアンスのきっかけは、エアラインの経営戦略の都合によるものだが、利用者にとっての利益は何なのだろうか。最大のメリットは、特定エアラインのチケットの通用範囲が広かったことだ。

たとえば全日空の割引チケットや格安航空券は、以前は全日空機が就航している都市にしか使えなかった。ラスベガスやダラスなどの内陸都市へ行くには、ロサンゼルスなどから米国内線のチケットが別途必要だったのである。

しかし、コードシェア便を利用すれば、全日空のチケットで全米の主要都市へ到達できるし、周遊チケットを買うこともできる。もちろん、出発地の空港で最終目的地までのスルー・チェックインも可能だ。

また、アライアンス加盟社間では基本的にマイレージカードの提携も行われているので、マイレージをためられる範囲も広がった。さらに、せっかくの機会だから、エアラインを乗り比べてみたいと考えているならばかえって好都合だ。

通常の格安券では許されないが、コードシェア便であれば、往きは日航機、帰りはアメリカン機という選択も許される。


ビジネスやファーストクラスの利用の場合はさらにメリットが大きい。通常使っているエアラインの待遇がアライアンス加盟社でも適用されるからだ。具体的には空港の地上ラウンジの利用などもできるほか、VIPとしての信用を他社で生かせることが大きい。

これまでは、いくら全日空で上得意客であっても、ユナイテッドやルフトハンザでは「ただの人」であったものが、アライアンス加盟社ではどこでもVIPとして扱ってもらえるというわけだ。

ところで、すでに発足している四つのアライアンスも、安泰というわけではない。ワンワールドは中核のアメリカンとBAの提携が両国政府の航空政策の対立のあおりを受けてコードシェア便が認可されるめどが立たないし、スターアライアンスは加盟メンバーの不協和音が伝えられる。

スカイチーム、ウイングスもこのままでは全世界をカバーできないことから、他のアライアンスのメンバーの切り崩し工作を行っている。そのため、アライアンスの崩壊や再編成がいつ起きても不思議ではない状況だ。