世界のエアラインはグループ化

この一〇年で世界の空は、アライアンス(連合)という名称で一挙にグループ化した。ユナイテッド、ルフトハンザを核に全日空も参加している「スターアライアンス」、アメリカン、ブリティッシューエアウェイズ(BA)を核にした「ワンワールド」、KLMとノースウェストにコンチネンタルなどが加わった「ウイングス(仮称)」、デルタ、エールフランスなどによる「スカイチーム」だ。この四グループで世界の航空旅客の三分の二を占める。しかも、強いもの同士が「徒党を組んでいる」のが特徴だ。

一九八〇年代までの世界のエアラインの戦略は「地域で一番」になることだった。ところが、世界経済がグローバル化し、エアライン同士の提携が増えてくると、いくら輸送量の大きなエアラインになっても、安心はできなくなった。

エアラインは路線を持たなければ乗客や貨物を輸送することができないので、世界中にネットワークを張らなければ強いエアラインにはなれない、という結論が浮び上った。

だが、世界の路線は国益の交換によるもので、世界中にネットワークを張ることは簡単にはできないし、自社の乗客が少ない市場までカバーするのは効率が悪い。たとえばシンガポール航空は、シンガポールと日本の間は自由に飛べても、三国間輸送となる日本と韓国間の輸送には参入できていない。

では、シンガポール航空が韓国企業を買収すれば韓国1日本間の輸送が自由になるかといえば、そうはいかない。韓国企業がシンガポール航空に買収されることによって韓国の国籍を失い、韓国企業としての輸送の権利がなくなるからだ。

そこで連合チームを結成して、互いに補完関係を結べるグループをつくろうと考えたのがアライアンスである。全日空スターアライアンスに入り、ユナイテッドと提携することによって、輸送権のないニューヨーク−マイアミなど米国内のフライトの座席も自社便として販売できる。

反対にユナイテッドは全日空の東京−北京路線のフライトも自社便同様に販売できるのだ。したがって、一社単独では難しい世界一周のチケットも、アライアンスとしてならば販売できる。

アライアンスは競合他社に対して強い競争力を発揮する。自国から離れて弱い市場で強いパートナーと連合を組むことによって、世界中に強力なネットワークを築ける。

コードシェア便という名での提携運航を互いに実施することによって、自社のチケットが世界中に通用し、これまでネットワークが欠如していたために逃していた顧客も獲得できる。

そのため世界の航空業界はグループ化し、上位二〇社のほとんどはいずれかのアライアンスに加盟している(日航ワンワールド、JASはウイングスに近い所に位置し、一部の提携を行って様子をうかがっている)。

日航とスイス航空は、大手でありながらいずれのアライアンスにも加盟していない。日航は乗客の八割を日本人が占めるが、「日本人の行動は相手国との行き来がほとんどで、第三国間での行き来はほとんどない」として、アライアンス・グループにとらわれない二社間のコードシェア便に力を入れている。

だが、今後各アライアンス内での協力体制が強化され、非加盟メンバーとの協力関係を排除する動きが目立ってくると、日航の戦略も通じなくなり、どこかのアライアンスに加入することになるだろう。