日本の安全保障

日本の安全保障に関する日米協力関係については、国内の評価は極端に分かれる。「安保ただ乗り」論に代表されるように、戦後の日本がアメリカの軍事力に依存し、経済再建に専念したことが今日の繁栄をもたらしたという考え方は、日本内外に強い。

このような評価は、近年のソ連、中国の日本分析にも反映されるようになった。もっともこれら両国の評価は、「資本主義は、必ずしも軍事産業に依拠しなくても、平和的に繁栄を実現することができる」という、資本主義に対する再評価の試みのなかで日本を例にとるというものである。したがって両国は、近年の日本の軍事力強化、軍事産業の成長という傾向に対しては、警戒感を隠そうとしない。

「安保ただ乗り」論の是非はともかく、ここでは近年の新たな傾向、とくにアメリカのアジア・太平洋での戦略に日本が軍事面でも積極的に役割を強めていること、すなわち、SDI計画をはじめとする対米軍事技術開発協力の進展、さらにアメリカの支持の下での自衛力増強について、従来から日米軍事協力のあり方に批判的な人々の枠をこえて、憂慮と関心が広がっている現実を確認しておきたい。

むしろここで問わなければならないのは、「今後の国際関係、とくに国際政治・軍事環境の変化の下で、日本の安全保障を確保するためにいかなる政策が妥当であるか」ということである。さらに具体的にいえば、「変化する国際環境の下で、引き続き従来の政策を継続することが妥当な選択であるかどうか」という問題が問われていると思う。