指定金銭信託(単独運用)

指定金銭信託はおカネの運用について、たとえば貸し出しに回してくれとか有価証券の買い入れに充てるとか、また銀行へ預金ナるといったようにごくおおざっぱに指定するだけで、細かいことは信託会社に任せるものです。だから信託会社は大体任せられた範囲なら、A会社におカネを貸してもB会社の株を買ってもかまいません。もちろん、委託者は信託会社を信頼して財産の運用を任せるのですから、信託会社は貸出先や買い入れる株式、社債などについてどう運用したら一番有利かを考えて、運用するよう努めます。これには信託会社の永年の経験と知識が役に立ちます。指定金銭信託金銭信託の大部分を占めています。

これはさらに信託されたおカネをそれだけ個別に運用するか、運用方法を同じくする他の信託されたおカネといっしよに運用するかによって、単独運用(指定単)と合同運用(指定合同)に分けられます。そこでまず信託の基本的な形である「指定単」から説明することにします。

これは委託者一人一人にっいて、受託から運用を個別に行うものですから、口座によって運用成果も必ずしも同一でない実績配当の原則がつらぬかれています。しかしその半面手数もかかるので、大口の投資家に適しており、戦前は保険会社などが利用していました。ただし戦後の資金不足期にはその自由な商品のゆえに一時非常に盛んになり、ピーク時の昭和二十六年頃は金銭信託の大半を占めたこともありました。その後経済の安定化に伴って乱用の批判もあり、受託の金額や期間また配当率を自粛することになり、高利回りのみを目的とする利用はほとんど見られなくなりました。

しかし契約の一つずっを個別に管理する指定単の仕組みは、年金信託など社会福祉関係商品にいかされていますし、金融自由化の進展や経済情勢の変化により、指定単にふさわしい新商品の開発も期待されるところです。